2022年参議院議員選挙に向けて、気候変動・エネルギー政策に関する要望書を提出しました

eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)」とFridays for Futureの各地域グループは、来たる参議院議員選挙に向け、各政党に対し「気候変動・エネルギー政策に関し要望書」を提出しました。

5月下旬に、各政党との意見交換を調整しています。
提出先政党: 自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党
*NHK受信料を支払わない国民を守る党は、住所・電話等の連絡先が明記されていないため、提出せず

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2022年参議院議員選挙に向けた
気候変動・エネルギー政策に関する要望

2022年4月26日
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
Fridays for Futureの各地域グループ
(Sapporo,Fukushima,Saitama,Tokyo,Yokohama,Yamanashi,Shiga,Dazaifu)

2022年、世界は大きな危機と混乱の中にあります。
ロシアのウクライナ侵攻による深刻な人道危機が続き、市民の命とくらしが奪われています。原子力発電所への武力攻撃と占拠という事態は、原子力利用の危険性を再確認させることとなりました。化石燃料やその他の資源は、しばしば戦争や紛争の原因となり、また武力増強の後ろ盾となってきました。私たちは、化石燃料や原子力に頼ることによる負の連鎖を、一刻も早く断ち切らなければなりません。エネルギー安全保障の観点からも、大幅な省エネルギーを進め、分散型再生可能エネルギーによるエネルギー自立こそ、今進める必要があります。

また2021年から世界で化石燃料価格が上昇し、戦争の影響もあり、今後さらなる高騰が予測されています。ますます上がる電気代やガス代は市民のくらしを圧迫し、特に生活困窮者等に深刻な影響が懸念されます。新型コロナウイルスの蔓延もいまだに続き、格差が拡大し社会的弱者が追い詰められている状況を、さらに悪化させる恐れがあります。

3月22日に発生した電力需給ひっ迫のように、大規模発電所に依存する電力供給体制の脆弱性もあらわになっています。昨冬から起きている電力の市場価格高騰も、再エネ新電力を苦境に立たせ、大手電力の独占の弊害を明らかにしています。

さらに、気候危機の状況も深刻さを増しています。IPCCの第六次評価報告書が公表され、世界の気温上昇を1.5℃までに抑える見通しがすでに非常に厳しくなっているともされています。異常気象による災害も、弱者により深刻な打撃を与えています。

日本は今こそ、再生可能エネルギー社会への転換を実現しなければなりません。原子力や排出削減効果の限られる火力発電の脱炭素化など誤った気候変動対策からは、一刻も早く脱却すべきです。私たちは、来る参議院議員選挙の気候・エネルギー政策において、貴党の公約に以下を掲げることを要望いたします。

1)老朽原発を含め全ての原発を停止し、再稼働はしない。核のごみを増やさない。新増設・リプレース計画および次世代炉の開発を中止する。原発事故被害者の生活再建の施策を具体化する。東電福島第一原発の「中長期ロードマップ」を早急に見直して「廃炉」の姿を明確にし、地下水流入を止め、放射能汚染水の「海洋放出」を中止する。

2)石炭火力発電は例外なく全てを2030年までにフェーズアウト(廃止)し、新設・リプレースは認めない。アンモニア・水素はその製造や輸送に多大なコストがかかり、CO2削減効果も限られている。火力発電の脱炭素化ではなく、脱却を目指すべき。

3)エネルギー効率の向上、住宅・建築物のZEH/ZEB化(省エネ率7割以上および太陽光発電)、交通部門の脱炭素化(コンパクトシティ、ZEV化)などの施策を大きく進め、2030年までに最終エネルギー消費を半減、2050年までに7割削減する。2030年までの温室効果ガス削減目標を2013年度比で少なくとも60%以上とする。

4)送配電網の運用ルールなどの問題を解決し、2030年の再エネ(*)導入目標を少なくとも70%以上(電源)に引き上げる。電源の再生可能エネルギー100%を実現する時期を明記し、2050年に向けてエネルギー全体でも再エネ100%を目指す。
*環境・社会影響に配慮し持続可能な形で

5)エネルギー政策関連の審議会委員の多様性を確保する。またパブリックコメントだけでなく市民参加の機会を複数設定する。

 

<参考> 

・Climate Action Tracker「日本の1.5°Cベンチマーク~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆~」2021年3月
https://climateactiontracker.org/documents/849/2021_03_CAT_1.5C-consistent_benchmarks_Japan_NDC-Translation.pdf
「日本の温暖化対策をパリ協定の1.5°C目標と整合させるには、国内の温室効果ガス(GHG)排出を2030年までに2013年度比で60%以上削減する必要がある。また例えば発電部門では、2030年までにCO2回収・再利用・貯留(CCUS)の備えのない石炭火力を廃止し、再生可能エネルギー(以下、再エネ)発電を60%程度かそれ以上にする必要がある。」

・未来のためのエネルギー転換戦略研究グループ「レポート2030ーグリーン・リカバリ―と2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」2021年2月
https://green-recovery-japan.org/
温室効果ガス: 2030年度 55%減、2050年度 93%削減(新技術を含めると100%削減)
エネルギー消費全体:   約40%減、    約62%減 (2010年度比)
電力:          約30%減、    約40%減 (2010年度比)
再エネ割合:        44%、      100%
ただし、2030年の材料生産量、旅客・貨物輸送量は、政府の2015年の長期エネルギー需給見通しに合わせられている。そのため、生産量や輸送量、輸出量などの減少・縮小を考慮すれば、さらなる削減が可能と考えられる。