2022年参議院議員選挙に向けた要望書提出、各党との面談報告

eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)とFridays for Futureの8つの地域グループは4月26日、各政党に参議院選挙に向けた気候変動・エネルギー政策に関する要望書を提出しました。
その内容をもとに、5月中~下旬に各党との意見交換を実施しました。各党との意見交換について、以下概要を報告します。

<参議院議員選挙に向けた、気候変動・エネルギー政策に関する要望書(4月26日)>
http://e-shift.org/?p=4021
要望内容
1)老朽原発を含め全ての原発を停止し、再稼働はしない。核のごみを増やさない。新増設・リプレース計画および次世代炉の開発を中止する。原発事故被害者の生活再建の施策を具体化する。東電福島第一原発の「中長期ロードマップ」を早急に見直して「廃炉」の姿を明確にし、地下水流入を止め、放射能汚染水の「海洋放出」を中止する。
2)石炭火力発電は例外なく全てを2030年までにフェーズアウト(廃止)し、新設・リプレースは認めない。アンモニア・水素はその製造や輸送に多大なコストがかかり、CO2削減効果も限られている。火力発電の脱炭素化ではなく、脱却を目指すべき。
3)エネルギー効率の向上、住宅・建築物のZEH/ZEB化(省エネ率7割以上および太陽光発電)、交通部門の脱炭素化(コンパクトシティ、ZEV化)などの施策を大きく進め、2030年までに最終エネルギー消費を半減、2050年までに7割削減する。2030年までの温室効果ガス削減目標を2013年度比で少なくとも60%以上とする。
4)送配電網の運用ルールなどの問題を解決し、2030年の再エネ(*)導入目標を少なくとも70%以上(電源)に引き上げる。電源の再生可能エネルギー100%を実現する時期を明記し、2050年に向けてエネルギー全体でも再エネ100%を目指す。
*環境・社会影響に配慮し持続可能な形で
5)エネルギー政策関連の審議会委員の多様性を確保する。またパブリックコメントだけでなく市民参加の機会を複数設定する。

<各党との意見交換概要>
●自由民主党
5月16日(月)16:30~17:00 秋本真利衆議院議員
・全体:党の政調には伝える。どれくらい反映されるかわからないが受け止めたい。実際政権与党は自民党公明党で構成されているので、与党に届けることが重要。
・全体:自民党の方向性は(要望内容と)同じとはいえないので、できる限りみなさんの声に近くなるように努力する。
・水素・アンモニア、CCS、原発:2030年・2050年の時にそれらの技術がいくらになっているのか。コストが合わないのであれば、なぜ導入するのか説明が必要。確実な技術導入が現実的だと思う。

●公明党
5月27日(金)10:00~10:25 角田秀穂衆議院議員
・原発:将来的な建て替え・新規建設には反対。再稼働は地元の同意が得られたものについて、再エネが安定するまで、年限までの稼働はやむを得ない。廃棄物処理の技術開発が必要。
・水素・アンモニア:見極めていくことが大事。再エネがどれくらい入るか。国民生活が混乱しないようにする。革新技術が必要。
・GHG削減:政府としてカーボンニュートラルは昨年言い始めたばかり。達成の見通しを立たせた上で、2030年度46%以上の削減を追求していく。具体的に10年で150兆円の投資が必要という数字もでた。民間と国で投資する。ESG債の発行もされる。ロードマップは積み重ねと新技術で。

●立憲民主党
5月25日(水)18:30~19:20 山崎誠衆議院議員、田嶋要衆議院議員、近藤昭一衆議院議員 ほか
・原発:大きな方向性としては、原発・化石燃料から、再エネ省エネへ。政府与党ではウクライナ危機の後、かなり大きな声として原発への揺り戻しがある。フランス・イギリスの動きをみて、原発推進が強い。その中で立憲はぶれることなく原発に反対していく。
・水素・アンモニア:実現できていないしコストが合わない。2030年目標でもほとんど入っていない。もし使えるのであれば、2050年のグリーン水素活用を産業用で残しているが、それに依存したプランは考えていない。
・再エネ:原発に頼らなくても、2030年度まではLNGを入れて、再エネ50%・LNG50%の組み合わせで安定供給可能だと計算上出ている。
・市民参加:「未来世代法」を検討している。国会という意思決定の枠組みに、若者の声を入れていくことを考えていきたい。
・全体:立憲民主党としては、GHG削減は積み上げ方式でここまでは可能だというぎりぎりの数字をだしていきたい。一方で、押さえなければならない目標がある。カーボンバジェットの観点からは、「60%までしかできないから許して」と言ったって、気候変動は待ったなしである。

●日本共産党
5月23日(月)16:45~17:20 笠井亮衆議院議員、岩渕友参議院議員、武田良介参議院議員 ほか
・全体:気候危機を打開する2030年戦略を昨年9月1日に発表。2030年まであとわずか。共産党としては2030年、2010年比で50~60%のGHG排出削減を掲げている。100%国産の再エネへ、原発ゼロ、石炭火力ゼロと掲げている。これは国民的な課題で、社会システムを大きく変えることなしにはできない。
・アンモニア混焼:石炭火力を延命させようとしており、懸念をもっている。
・原発:汚染水海洋放出も選挙の大きな争点にしていきたい。
・GHG削減:カーボンバジェットを考えると残された時間は少ない。省エネ、再エネ、脱石炭にしっかりと取り組む。

●日本維新の会
5月30日(月)14:00~14:45 小野泰輔衆議院議員
・原発:基準をクリアしたものについては再稼働すべき。この点は、前回衆院選から変化している。処理水は現在容量いっぱいであるし、安全基準を満たしたものであれば、政治決断をし、放出する。既存原子炉の廃止について、技術がない。新設はロシアと中国しか継続していない。廃炉派も継続派も、これまで国策としてやってきたものについて、自由主義陣営において技術を持ち、なんとかできるようにすべき。
・石炭火力:世界的に減少しており、気候変動的にもいずれなくなっていくべき。グリーンが市場価値に織り込まれると、自然と石炭火力発電は減る。化石燃料価格が高騰しており、これを転機として前進することが期待される。
・水素・アンモニア:世界中で水素研究は行われており、日本が能力としてついていくことは必要。ただ、発電だけでなく熱源利用という可能性もある。アンモニアについては、現在、二倍のCO2が出るので、これが気候変動対策に貢献するのか。技術革新が必要。CO2の削減効果は混焼だと薄いので、それ以外の分野での貢献があるのではないか。
・省エネ:街全体で効率的なエネルギーの需要体制を作る必要がある。
・再エネ:維新では、太陽光の特性を踏まえて、需給を調整できるような蓄電池の普及が重要と考えており、これを国家戦略としてやっていくべきと考えている。できる規制緩和を行い、再エネが導入されやすい環境を作ることは大事。
・市民参加:多様な方々の参加が大事。

●国民民主党
5月17日(火)16:30~17:00 浅野哲衆議院議員
・全体:エネルギーコストが高まっている。安定的に資源確保できるのかの見通しが以前にも増して厳しくなっているという認識を持っている。今年は、再エネ導入促進と並行して、国民生活を支えるための安定供給の確保に重心を置いた議論が進んでいる。
・省エネ:カーボンニュートラルを目指さなければならないとは思っているが、大前提としてはエネルギーの安定供給。最終エネルギー消費を縮小させていく方向性は共有。
・原子力:ピュアなカーボンニュートラル電源ではないが、既存の化石燃料に比べれば排出量は少ない。選択肢から即座に排除されるものではない。避難計画について、地元住民の理解がなければ動かせられないという認識はしている。
・石炭火力:カーボンニュートラルを目指す上では難しさのある電源。ただ、2030年までにすべてを廃止となると産業界がそれでもつのか、という懸念がある。
・GHG削減:2030年度目標についてはまだ明示していない。政府目標の46%がどのように組み立てられているのか精査しているところ。
・市民参加:多様性、市民参加の確保はその通り。党としてカーボンニュートラルに向けた国民的会議体を創設すべきということはコンセンサスが取れている。市民、事業者、有識者など、さまざまなステークホルダーが参加する場の設定が必要。

●れいわ新選組
5月31日(火)16:00~16:30 櫛渕万里衆議院議員
・全体:脱原発・グリーンニューディールに200兆円規模の財源確保。廃炉ニューディールで地域の経済と雇用を守る。積極財政で景気をあげる。
・石炭火力:2030年までにフェーズアウト。CCSとアンモニアはやるべきではない。
・GHG削減:2030年度に、2013年度比50%以上削減を目指す。
・省エネ:ZEB・ZEHの実現に向けて進めていく。環境政策に資する公共事業をしっかりやる。投資しながら雇用と地域活性化を進める。
・再エネ:送電網を国が買い上げ、託送料金や空き容量の問題も規制を取っ払っていく。エネルギー自給率が低いために災害、戦争時に脆弱である。自国の自然エネルギーでエネルギー自給率を高める。

●社会民主党
5月12日(木)13:00~13:50 服部良一氏
・全体:マニフェストは作成中で、地球環境と人間の共生を掲げる政策を5項目で書いている。
・原発:過去に「原発ゼロ基本法」を国会に提出しており、再稼働が予定される原発現地のみなさんと連携して運動している。東京電力の放射能汚染水の海洋放出にも反対である。
・石炭火力:2030年ゼロを掲げている。
・水素:活用については、まだ議論中。
・省エネ、GHG削減:最終エネルギー消費削減目標は、2013年度比で2030年度4割減、2050年度7割減、温室効果ガスについては、2030年度60%減、2050年度ゼロを去年の衆院選で掲げた。
・再エネ:電力分野で2030年50%、2050年100%を去年の段階で掲げた。より高い目標について議論したい。
・全体:グリーンニューディール、グリーンリカバリーを打ち出している。脱原発と地域経済、再生可能エネルギー活性化など、進めていく。地域分散型のエネルギーをつくっていく必要がある。