【エネルギー基本計画】その三

Q5. そもそも「エネルギー政策基本法」ってどんな経緯でできたの?

A. 基本計画の元となっている「エネルギー政策基本法」は、2002年の自民党政権時代に議員立法で成立しました。当時、東京電力副社長から参議院議員に比例代表で当選した加納時男議員が、自民党政務調査会 石油等資源エネルギー対策調査会・エネルギー総合政策小委員会事務局長として法制化を取り仕切っていました。国策として原発を位置づけ、プルサーマル計画なども国の方針として確固たるものにするねらいがあったといわれています。基本法制定後も、自民党としてエネルギー基本計画の提言をまとめるなど、計画策定に実質的な影響力を及ぼしていました。

2009年に民主党政権が誕生し、2010年に基本計画の改定が行われましたが「全面的な改定を行った」としながらも、上述のとおり原発や化石燃料依存の方向性は全く変わっておらず、特に原発推進の位置づけは非常に大きなものとなっています。

Q6. 「エネルギー基本計画」をどう見直したらいいの?
A.  東日本大震災による福島第一原発の事故を受け、菅首相は5月10日、記者会見でエネルギー政策について次のように表明されました。

原子力と化石燃料というものが、これまで特に電力においては大きな2つの柱として活用されていました。これに加えて今回の事故を踏まえて、また、地球温暖化の問題も踏まえて、あと2つの柱が重要だと考えております。その1つは太陽、風力、バイオマスといった再生可能な自然エネルギーを基幹エネルギーの1つに加えていく。そしてもう一つは(中略)エネルギーを今ほどは使わない省エネ社会をつくっていく。
詳細

首相が再生可能エネルギーを基幹エネルギーとしてとらえ、エネルギ―の需要を減らす社会ビジョンに言及したことは、エネルギー基本計画の全面見直しに向けた宣言として多いに期待したいところです。

いずれにしても、原発14基を今から20年以内に増設することは事実上不可能で、当然計画の見直しがせまられます。原発依存、化石燃料依存型の現在の計画を全面的に白紙撤回し、これらを段階的に削減しつつ、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー供給構造へと切り替える計画へと変えていきたいですね。


これまで複数の環境NGOが、エネルギーシフトに向けた提案を出しています。そして震災後も、今回の事故をふまえ提案をまとめていますのでご紹介しておきます。

◇環境エネルギー政策研究所

「3.11 後のエネルギー戦略ペーパー」No.1 「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ

「3.11 後のエネルギー戦略ペーパー」No.2 3.11 後の原子力・エネルギー政策の方向性~二度と悲劇を繰り返さないための6戦略~

◇気候ネットワーク

原子力政策を抜本的に見直し、省エネと再生可能エネルギーを軸とした低炭素社会への転換を

「25%節電」「温室効果ガス25%削減」「再生可能エネルギー電力25%」は同時に達成可能~震災復興と温暖化対策の多くは共通~

◇グリーンピース・ジャパン

日本版『エネルギー[r]eボリューション』完全版

◇WWFジャパン

2050 年までに、再生可能エネルギー100%は実現できる『The Energy Report -100% Renewable Energy By 2050』

 

Q7. 「原子力政策大綱」とはどう関係するの?
A.  日本の原子力政策の基本方針を示したものとしては「原子力政策大綱」があります。これは、1956年以来、約5年ごとに計9回にわたって策定された「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を改め、「原子力政策大綱」として2005年10月に原子力委員会での決定を経て、閣議決定されています。このとき、「エネルギー基本計画」の原子力推進政策の内容もふまえ、今後10年程度の原子力の基本方針として示されました。
原子力政策大綱についてはこちらをご覧ください。


「原子力政策大綱」は、2010年11月に新大綱策定会議が設置され改訂に向けた作業が行われていました。しかし、今回の原発事故などの事態を受け、当面中止されています。現在、受付期間の終了日を設けずに意見募集が続けられていますので、原子力政策の全面改定に向けても意見を出しましょう。
意見募集

お、新大綱策定会議に委員として出席していた原子力資料情報室の伴英幸さんが、問題の詳細を明らかにしていますので、ご参考にしてください。
問題の詳細