【エネルギー】電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 再エネ普及拡大へ、よりよい制度として今国会での成立を!~法案をめぐる10の論点~

2011年7月22日
eシフト市民委員会

※7月25日要請「再生可能エネルギー促進法、賦課金上限枠の撤回を!」 はこちら
http://e-shift.org/?p=967

1.再生可能エネルギーの導入目標を少なくとも202020%以上と打ち出すこと

  • 法案では再生可能エネルギーの導入目標が定められていない。
  • 現在、上程されている「地球温暖化対策基本法案」では法条文に再生可能エネルギーの導入目標が入っているので、これを震災後の情勢をふまえた形で修正し、今国会で成立させることが肝要。
  • なお、エネルギー基本計画では、「2020年までに一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合について10%に達することを目指す」とあるが、震災後にエネルギー基本計画は白紙に戻すとされているので、こちらも震災をふまえて目標を見直していくべき。

 

2.買取(調達)価格と買取(調達)期間は、再生可能エネルギーの種類ごとに、その設置に対して採算がとれるよう設定すること

  • 法案は、調達価格と調達期間は経済産業省令で定め、「第十六条の賦課金の負担が電気の使用者に対して過重なものとならないよう配慮」することが明記されているが(第三条)、賦課金の議論優先ではなく再生可能エネルギーの普及の観点から価格や期間を設定することが必要。
  • 買取(調達)価格は、太陽光発電以外を一律とせず、それぞれのエネルギー源において、地域主導の再生可能エネルギー導入に十分なインセンティブとなる高さで設定する。
  • バイオマス発電は、小規模分散型の発電設備による発電にインセンティブが働くよう、規模ごと、バイオマス資源ごとに買取価格がきめ細かに設定されること。
  • 買取(調達)期間は、できるだけ短期で投資回収できるよう十分に高い買取価格を設定することが前提だが、20年もしくは耐用年数の買い取りを保証し、インセンティブを確保すること。

 

3.電力会社の都合で調達契約や送配電設備への接続が拒否されないよう担保すること

  • 電気事業者が、「電気事業者の利益を不当に害するおそれがある」場合には調達契約を拒否でき(第四条)、「電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがある」場合に総配電設備への接続を拒否できる規定がある(第五条)が、これによって再生可能エネルギー発電設備の増加にともなう電圧変動などの影響回避のために系統容量の制限や出力抑制を課すことのないよう、再生可能エネルギー電気を優先的に接続しなくてはならない。
  • 電気事業者に有利な条件設定によって、再生可能エネルギー普及の阻害要因とならないような担保が必要。

 

4.再生可能エネルギーの発電設備は新規だけではなく既存設備も対象とし、実用化レベルの設備を幅広に対象とすべき。ただし、木質バイオマス発電は、森林伐採やそれに伴うCO2排出が起こらないよう配慮すること。

  • 再生可能エネルギーの発電設備の基準や発電方法については、経済産業省令で定めることとされているが(第六条)、再生可能エネルギー普及の阻害要因とならないような担保が必要。

 

5.「費用負担調整機関」のような第三者機関は時代に逆行。経産省官僚の天下り機関とせず運営費は賦課金に上乗せしないこと

  • 本来は、電力事業者が再生可能エネルギーの電気を「買取」り、その経営において必要な負担を電力料金に上乗せすればよい。費用を管理する第三者機関を設置することにより、天下りの温床、運営コストや追加的行政コストの発生が懸念される。

 

6.消費電力に対する賦課金の上限を0.5/kWhなどと決めるべきではない

  • 海江田大臣は国会での質問に対して消費電力に対する賦課金の上限を0.5円/kWhなどと発言しているが、賦課金に上限を設けることで自然エネルギーの普及に制約をかけることになりかねない。制度導入当初は若干コスト高でも、大幅に普及が進めば導入コストの削減につながり、将来的には賦課金の額も下がることになる。あらかじめ賦課金を設けることは導入の足かせとなる。

 

7.住宅用太陽光発電は、余剰電力ではなく、全量買取とすること。

  • 現行の余剰電力買取制度では、住宅用は余剰電力に限った買取で、海江田大臣は新たな制度でも太陽光発電は住宅用は現状と同じで余剰電力とすると答弁している。しかし、1,000万戸の住宅に太陽光パネルの設置するためには、全量買取制度とすることが肝要である。

 

8.送配電網の整備・強化を同時に行いつつ、いずれは電力会社の独占体制を見直し、発送配電分離を見据えた制度設計が必要

  • 再生可能エネルギーの普及が可能となるような送配電網の整備・強化についての規定がないので、入れるべき
  • 電力会社の地域独占、発送配電分離を含む電力供給システムの見直しは、今後の再生可能エネルギーの大幅普及には不可欠となっている。発送配電分離されれば、電気事業者の定義(第2条)を見直し、送配電事業者が買取(調達)をすることや、特定契約主体になること(第4条)等の対応が必要となる。

 

9.「廃止を含めた」見直しではなく、導入拡大に向けた見直し規定とすること

  • 見直し規定では、「賦課金の負担が電気を大量に使用する者その他の電気の使用者の経済活動等に与える影響、内外の社会経済情勢の変化等を勘案」し、「この法律の施行後平成三十三年三月三十一日までの間にこの法律の廃止を含めた見直しを行う」として、エネルギー多消費産業を考慮した見直しとされているが(附則第六条)、「再生可能エネルギーの導入拡大を進めるための」見直しとするべき。

 

10.経済産業省令に委ねず、市民参加のプロセスを!

  • 本法案は、骨格がすべて経済産業省令で決めることとされており、この制度の命運は経済産業省に任されている。もともと全量固定価格買取制度の同省に否定的であった同省に任せるのではなく、市民参加のもとで公正な判断のもとに法案骨格が定められるべきであり、そのプロセスを国会において担保しておくことが必要。