どうする?容量市場 リーフレット

古い原発や石炭火力を温存し、再エネ新電力に大きな負担

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2020年7月に容量市場の最初のオークションが実施され、9月に結果が公表されました。予想外の価格高騰に業界は騒然、特に負担の大きい再エネ新電力各社は危機感を募らせています。しかし、実際の支払いが発生するのは2024年度です。eシフトは、再エネをますます阻害し脱炭素社会にも逆行する容量市場の撤廃を求めます。

背景

電力自由化で大手電力からの離脱が進むと、これまで電気代から回収していた原発や火力発電の維持コストが十分に確保できなくなります。また、電力自由化や再エネの増加が進むと、将来の売電収入の見通しが不安定になります。
気候危機対策のため、再エネにシフトしていかなければなりません。しかし、電力の安定供給という名目で大手電力の持つ原発や火力発電の維持コストを、新電力(とその消費者)からも回収しようという意図で導入されたのが容量市場です。

しくみ

・容量市場では、「将来(4年後)の発電能力(容量、kW)」が取引されます。2020年度のオークションでは、2024年度の供給力の取引が行われました。

・4年後に日本全体で必要とされる発電容量を電力広域的運営推進機関(OCCTO)が決めて、発電事業者に入札を求めます。

・今回は古い発電所の多くが0円で入札されましたが、落札価格は事実上の上限価格の14,137円/kWとなりました。落札したすべての発電所が、この価格をもらえることになります。

・2024年度に、OCCTOがすべての小売電気事業者(と一部送配電事業者)からピーク需要(kW)に応じて容量拠出金を集め、落札した電源に支払います。

ここが問題

・新しい発電所も古い発電所もkWあたりでは同じ落札金額がもらえるため、古い原発や石炭火力の電源をずっと持つ方がお金をもらえ、エネルギーシフトがますます遅れます。

・大手電力も小売部門では支払いますが、発電部門での収入もあるため、実質的な負担はかなり小さくなります。一方で大規模電源を確保していない新電力、特に再エネ新電力は、収入はなく支払負担のみです。

・再エネ新電力は値上げをしなければ厳しい状況ですが、大手電力が値上げをしない(ダンピングの可能性もありうる)場合、競争力を失います。顧客獲得もさらに困難となり、経営の危機が見えています。

問題点詳細

1)原発・石炭火力が温存され、エネルギーシフトを妨げる

・常に一定量を発電し続ける電源(例えば原発や石炭火力など)がより多くkW価値を認められ、再エネの容量価値は低く評価されています。

・新しい発電所も古い発電所もkWあたりでは同じ落札金額がもらえるため、古い原発や石炭火力の電源が温存されることにつながります。再エネや蓄電池などへの投資も控えられるおそれがあり、エネルギーシフトや脱炭素化を妨げます。

・経産省が意図した「天然ガス火力発電所の新設」にもつながりません。またそもそも、電源不足になるという想定が十分に検証されたものではありません。

2)古い電源は収入の二重取り、消費者にとっては二重払いになる

・容量市場で回収することが想定されているのは初期投資などの固定費ですが、日本の大半の発電所の初期投資費用は、電気代に算入されており消費者は支払い済みです。

・発電事業者にとっては「二重取り」であり、消費者にとっては二重の支払いになります。

3)大手電力と再エネ新電力とで負担に格差、再エネ新電力の経営負担で電力自由化も危機

・容量市場は、直接の対象が小売電気事業者(消費者は間接的に負担)のため、新電力(再エネ新電力)と大手電力会社の間に二重の格差があります。
1つ目は、容量市場収入を受け取るか受け取らないかの違い
2つ目は、顧客の電力使用形態による容量拠出金負担の違い(新電力により不利)

・消費者から見て、大手電力のほうがより安い状況となり、ますます再エネ新電力への切り替えが難しくなります。

4)消費者の知る権利を損ねる

・容量市場は、市場規模が約1.6兆円にも上る巨大な官製市場です。

・しかし、現状では、だれが保有するどの電源が落札したのかの詳細は公表されていません。公表は応札側の電源種別ごとの合計など、わずかな情報だけです。

・電力料金に含まれる容量市場分のコストも示されないでしょう。

・きわめて説明責任に欠ける制度設計です。

海外では

・電力業界の要求によって、EUのいくつかの国や米国の一部地域でも容量市場は導入されています。しかし、新たな投資や電力価格の安定への寄与はわずかです。一方、石炭火力の廃止政策との矛盾などが大きな問題となっています。

・英国の容量市場に対しては、国による補助金を禁止したEUのルールに反するという訴えがEU司法裁判所に提出され、容量市場は一時停止となりました。

じゃあどうすれば?

・電源不足の解消が目的なら、持続可能な形で再エネを増やすことが必要です。その上で、電力融通や省エネなど適切な対策を取れば電源不足はおこらず、容量市場は不要です。

 

参考情報:かいせつ容量市場スペシャルサイト(OCCTO)https://www.occto.or.jp/capacity-market/

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発行:2020年12月