再エネの未来が今ピンチ?!パブコメだそう!(1月9日まで)

「再エネ特措法」(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)施行規則の一部を改正する省令案等に関する意見募集概要について

<背景>

この改正案は、再生可能エネルギー発電設備については系統に優先接続するとした「再エネ特措法」の定めにも関わらず、5つの電力会社(正式には「一般電気事業者」)から、「系統接続保 留」という措置がとられたことを受けて、その対策として経産省から示されたものである。

<大きな3つのポイント>

1.     太陽光発電と風力発電の出力抑制。

各電力会社の算定に基づいて、再生可能エネルギーの系統への「接続可能量」を定め、その範囲外は、500kW未満も含め、すべての太陽光発電、風力発電の発電を制限することを認める。(ただし、これまでの「日単位」30日上限から「時間単位」に変更。)

2.     調達価格が決定される「時点」の変更。

「適用される調達価格」(固定価格買取制度による買取価格)は、これまで「連携承諾時」か「設備認定時」のどちらか遅い方とされていたが、今後は「接続工事負担金」などを支払ったあとの「接続契約時点」の価格となる。

3.     「遠隔出力制御システム」(スマートメーター)の設置義務づけ。

出力抑制を可能にするため、今後は全発電設備に「遠隔出力制御システム」設置が求められる。本来は需給調整のための設備であり、系統運用側のコストとすべきところ、発電設備側にコスト負担が発生することとなる。


<「改正案」の問題点=パブコメ提出のポイント>

A.  「接続可能量」の算定根拠には問題あり。

1)   原発は現状の「ゼロ」を踏まえた算定根拠とすべき。

「接続可能量」を算定した「系統ワーキング」の資料「各社接続可能量の算定結果」P2の「需給バランス断面のイメージ図」(によれば、原発の一定程度の運転が前提として、再生可能エルギーが外に押し出されている。これは「原発の運転履歴」を「過去30年履歴にもとづいて」計算した結果であり、現状とはかけ離れ、きわめて不当である。

2)       「系統の広域運用」を考慮に入れるべきである。

2015年度から導入が決まっている「広域運用」は、今回の接続保留問題を解決するカギであるにも関わらず、ほとんど考慮されず、相変わらず電力会社管内の系統運用レベルでの判断しかなされていない。

 

B.抑制や接続拒否は慎重かつ透明なルールの下で行われるべきである。

3)       「抑制」をかける条件の明示をすべき。

500kW未満を含む、すべての太陽光発電と風力発電に抑制をかけるとされているが、どういう条件なら抑制がかけられるのか明示されていない。電力会社による恣意的な運用を防止するため、明確なルールを定め、「抑制」後にも、その状況が「ルールに合致した」必要なものであったことを説明する義務を、電力会社に課すべきである。

4)       送電容量を理由の「接続拒否」の根拠も明示すべき。

現在も「接続希望地点」(系統連系する電柱)での「送電可能な容量を超える」という理由で「接続拒否」(送電可能量「0kW」と示されるだけ)がまかり通っているが、送電線の容量がどれだけで、どのような需要と供給があるために「0kW」と判断されたのかを常に無償で明示する義務を電力会社に課すべきである。

 

C.改正によって再生可能エネルギー側の負担を増やすべきではない。

5)       「調達価格」決定は「設備認定時」とすべきである。

「接続枠の空押さえ防止」のために、「調達価格」の決定時期を「接続契約時点」とするという改正案だが、この場合、3)や4)で示したような理由で接続契約が遅れる発電事業者にとって非常に不当なものとなる。接続協議に1年以上を要すこともまれではなく、この間に調達価格が変わることは事業採算性に直結する。「空押さえ防止」のためには、本当に事業を行おうとする主体であるのか、実際に土地取得をしているのか、周辺地域との合意はできているかなどの条件を満たしているか否かなどで判断することが可能なはずである。

6)       微細な変更での認定取り消し(取り直し)は行うべきではない。

設備認定時の設計と、実際に設置業者の決定、設備の選定を経る間には、出力等の微細な変更は、ほぼ常に起こる。そのような微細な変更でも認定取り消しが、今回の改正案には含まれている。このような理由での認定取り直しは、事業計画に大きな影響を与え、場合によって計画断念にも追い込みかねない。変更取り消しは従来ルールのままとすべきである。

7)       工事負担金の1ヶ月以内支払い義務化は中止すべきである。

「接続保留」問題の解決と、このような微細な支払い方法の変更は関係がないはずである。支払いを直ちにすることは、一見は当然のように見えるかもしれないが、工事負担金は数千万円、場合によっては数億円になることもある。このような「支払いに関する」変更は、市民出資等で事業を行う財政基盤の弱い事業者に不当に厳しいものとなる可能性がある。財政基盤の大きな企業のような事業者のみを優遇する規定となりかねない。

8)       「遠隔出力制御」のコストは系統運用側負担とすべきである。

再生可能エネルギーの出力制御にとって「遠隔出力制御」が必要であることは認めるが、それは系統運用を円滑に行うためのものであり、系統運用側のコスト負担(まさに電気料金参入)で行うべきである。送電線の増強や、変電設備の増強は、将来的な計画性を持って行われるべきで、発電設備ができる都度に負担を求める類いのものであってはならない。

 

D.その他

9)       太陽光発電の「調達価格」を一律としていることをあらためること。

系統への「接続保留」が問題提起されている現時点でも、日本の電力供給量における再生可能エネルギーの比率は2.2%であり、10%から20%を達成している諸外国に比べて低すぎる。太陽光発電単独としても低すぎるもので、今後も太陽光発電の普及が進むような調達価格設定がなされるべきである。具体的には設備規模別に設置コストを分類し、割高である小規模施設にメガソーラーと同じような調達価格が押し付けられないような設計とすべきである。

10)再生可能エネルギーを選択して購入できる仕組みとすること。

電力小売の全面自由化を前に、消費者には再生可能エネルギー電気の選択購入の権利が保証されるべきである。ところが、現状のように電力供給量における再生可能エネルギー比率2.2%(大型水力を除く)では、消費者の選択権が保証されているとは言い難い。したがって、この改正案が、今後の再生可能エネルギーの普及拡大を阻害するものであってはならない。

11)政府としての再生可能エネルギー普及の高い目標数値を示すこと。

上記の10)を実現するためには、再生可能エネルギーのさらなる普及が不可欠である。2010年に政府が策定した「2030年のエネルギー需給の姿」では、大型水力を含め21%(大型水力以外は10.5%)であった。固定価格買取制度による設備認定量は、すでにこれを上回る勢いにあるが、それを系統側が受け入れられないという現状から、今回の法改正となっている。問題は再生可能エネルギー側にあるのではなく、系統、および系統運用側にあることをしっかりと踏まえ、2010年の目標をはるかに超える高い目標数値の設定と、それを実現する施策を打ち出されるよう求める。

<参考>

パブコメのお知らせページ
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620114024&Mode=0

現行の「再エネ特措法」施行規則
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/2014_chotatsu.pdf

系統ワーキング第3回(この資料9を参照)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/keitou_wg/003_haifu.html

自然エネルギー財団の作成資料
http://jref.or.jp/images/pdf/20141226/JREF_Proposal_FITUnyo.pdf