【声明】原発ゼロと温暖化対策をトレードオフにしてはならない

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【eシフト声明】                    2013年11月15日
温暖化削減目標「05年比3.8%減(90年比3%増)」見直しを
~原発ゼロと温暖化対策をトレードオフにしてはならない~
http://e-shift.org/?p=2842
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
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>PDFはこちら 131115_eshift
本日政府は、温室効果ガス削減の “目標”を「2020年に05年度比3.8%減」と
することを決めました。1990年の排出量から7.1%増加した2005年を基準に
「3.8%減」ということは、京都議定書第1約束期間(2008~2012年)の達成が
見込まれている「1990年比6%減」 の削減目標分を帳消しにし、さらに90年
比では3.1%増加することを意味します。  

気候変動の被害は、遠い未来のことではありません。先日、フィリピンでは巨
大台風ハイエンがフィリピン全土を覆う規模で上陸し、被災者1000万人、死者
数千人規模にものぼるといわれる大災害をもたらしました。

今月11日からワルシャワで開催されている気候変動枠組条約第19回締約国会合
(COP19)の議場では、フィリピン政府代表が涙ながらにその惨状を訴え、意
味のある交渉がなされないかぎりCOP期間中絶食すると宣言し、この会合に臨
んでいます。
ゲリラ豪雨や猛暑による高温や巨大台風の上陸など、過去に経験のないような
極端な気象は、日本でも頻発するようになりました。10月に直撃した台風26号
では、伊豆大島が大規模な災害に見舞われ、多くの尊い命が失われているので
す。
今年9月には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第一作
業部会の報告書がまとめられました。気候変動が人間の活動によるものだとす
る確実性はこれまで以上に高まり、今後地球の平均気温の上昇レベルを最小限
にとどめるためには、温室効果ガスの大幅な削減が必要であることがつきつけ
られました。
そして今、COP19では、世界各国が温室効果ガスの削減レベルをいかにひき上
げるか、国際交渉の合意を目指して議論が進められている真っ最中です。その
中にあって、日本がようやく決めた中期目標が、90年比で増加を意味する数字
であったことは、気候変動の被害にあった人たちの傷口に塩を塗る行為であ
り、世界の交渉に水をさすことにほかなりません。原発事故を受けて「原発ゼ
ロ」を前提にする中であっても、悲惨な気候変動問題にも向き合い、野心的な
目標に引き上げ、脱原発と地球温暖化対策の両立をめざすべきです。日本政府
は、以下のことをふまえて、中期目標を見直すべきです。
【1.取り返しのつかない事態を引き起こした原発事故の教訓を活かす】
2011年3月の東日本大震災東京電力福島第一原子力発電所の事故は、20万人近
い人が避難生活を余儀なくされ、今なお放射性物質を海洋に大量に垂れ流しつ
づけ、事故収束のめども立っていません。ひとたび巨大事故が起きると取り返
しのつかない事態となることを経験しています。私たちはこの事故を教訓に、
未来に対して責任ある行動をとるべきです。
世界規模でのきわめて甚大な被害をもたらす気候変動のリスクを回避するため
には、気温上昇を2℃にとどめる「2℃目標」が世界共通の課題となっていま
す。気温上昇がある一定の地点を超えるともう後戻りできない世界規模での悲
惨な影響が起ると言われているためです。取り返しのつかない事態を回避する
ために、先進国に求められる2020年25~40%削減という削減レベルに近づける
ことが不可欠です。
【2.脱原発と温暖化対策はトレードオフにすべきではない】
現在、日本では、原子力発電所50基全てが停止しています。2011年以降、原発
停止分を効率の悪い火力発電で置き換えているために、CO2の排出量は増えて
います。しかし、長い目で見た時に、原発が決して地球温暖化対策にならなか
ったことは過去の歴史が物語っています。それは、原発を増やすのと同時に、
石炭をはじめとする火力発電所も同じようにバックアップとして増やし、原発
でトラブルが起きれば火力発電所を動かすという両者のバランスの中で利用し
てきた結果、CO2が増えているためです。脱原発か地球温暖化対策か二者択一
で天秤にかけるのではなく、脱原発も地球温暖化対策も両立させることこそ、
持続可能な社会を構築する上で、唯一残された道です。
【3.根拠なき数値目標。燃料転換、省エネと再エネの可能性の深掘りを】
この度発表された「05年比3.8%増」という数字には何の根拠も示されず、ま
た、政府の審議会などとも全く別のプロセスの中で突然発表されました。しか
し、燃料転換や省エネの可能性、再生可能エネルギーの導入目標の設定などに
よって、原発をゼロにしても大幅な削減は可能です。
現在、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)によって、再生可能エネ
ルギーの導入量は急速に伸びています。今後は、再生可能エネルギーの目標を
たて、電力システム改革をすすめ、政策的な後押しによって大幅に増やすこと
は可能です。さらに、原発の稼働を見込まずとも、省エネルギーの積極的な強
化、そして火力発電でも石炭からLNGへと燃料転換することによっても、温室
効果ガスの大幅削減は可能となります。こうした可能性を最大限考慮して、数
値目標を検討すべきです。
日本政府が、国際社会や将来世代にも恥じない目標を打ち出し、2050年に世界
で半減するという人類共通の課題に正面から立ち向かい、国内の目標も野心的
な目標へと引き上げることを強く望みます。
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問合せ:脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)
〒171-0014 東京都豊島区池袋3-30-22-203(国際環境NGO FoE Japan気付)
tel: 03-6907-7217 fax: 03-6907-7219