【Q&A】原子力規制委員会同意人事案を撤回と野田内閣不信任案提出に対する Q&A

(問1)政府が提出した「原子力規制委員会同意人事案」が国会を通 ると、原発再稼働や脱原発の声が無視されることになるというのは、どうしてでしょうか。

(答)政府が提出した「原子力規制委員会同意人事案」は、原発再稼 働反対や脱原発の人は一人も入っておらず、原子力ムラの村人で占められています。原子力規制委員会は、政府から独立した委員会ですか ら、今後5年間は「原子力ムラの出店」が、規制を行うことになります。

〔説明〕

原子力規制委員会は、原発再稼働の判断、原子炉40年廃炉規定の延 長、高速増殖炉もんじゅ・再処理工場や放射性廃棄物の管理処分の安全性の判断などを行う、行政からも政治からも独立した委員会です。
大飯原発は「野田総理が責任を持つ」と大見得を切って再稼働しました が、原子力規制委員会発足後は、「原子力委員会が責任を持つ」ことになります。関西 電力は、次は高浜原発を再稼働させると言い、枝野経済産業大臣が「不快感」を示したと報道されていますが、枝野大臣は 「原子力規制委員会が発足してから判 断すべきことだ」としか言っていません。
再稼働反対の官邸前抗議行動をしても「再稼働を決めるのは中立独立の原 子力規制委員会で総理は責任も権限もない」ということになりますし、脱原発といって も「個々の原発の安全性を審査して動かしていいかどうかを決めるのも原子力規制委員会」ということになります。すべて は、原子力規制委員会が仕切ることに なるのです。
その原子力規制委員会は、政府提案によれば、原子力ムラの住人で占めら れています。ですから、早く原子力規制委員会を発足させて、原発を再稼働させようと しているのです。また、個々の原発の安全性を判断する原子力委員会は、政府からも政治からも独立していますから、選挙 で政権が代わっても委員の任期中は (5年間・3年間・2年間)総理大臣といえども止めさせることはできません。ですから、原子力規制委員会の人事は決定 的に重要で、原発を推進してきた原子 力ムラの人たちが行ってはいけないのです。
ちなみに、政府が提案した原子力規制委員会の同意人事案は、人気5年の 委員長候補が田中俊一氏、人気3年の委員候補が更田(ふけた)豊志氏と中村佳代子氏、任期2年の委員候補が大島賢三氏と島崎邦彦氏です。
×不適格:委員長候補の田中俊一氏は、もんじゅを運営している日本原子力 研究開発機構の理事・原子力学会会長・原子力委員長代理を歴任してきた原子力ムラの村長的存在。
※3.11後の「謝罪」なるものはよく読んでみると「原子力推進への謝罪」ではなく「事故を起こしたことへの謝罪」です。その程 度の謝罪なら東京電力もしています。
※田中俊一氏が行っている除染は汚染土を積み上げ本来被災者に支払うべき 賠償金を値切る事業であるため、この事に気づいた被災地福島の人々の怨嗟の的となっています。
×不適格:委員候補の更田(ふけた)豊志氏は、日本原子力機構の現役副部 門長です。原子力規制委員会設置法は、「原子力事業者」を電力会社に限定していません。そのため、もんじゅ運営などをしている組織の職員 は、欠格事由に抵触します。
×不適格:中村佳代子氏は、放射性廃棄物の処理を営む日本アイソトープ協 会の主査です。田中俊一氏の除染の同門です。
×不適格:大島賢三氏は、元国連大使の外務官僚です。独立中立の委員会の 委員には不適格です。

(問2)内閣不信任決議案を提出すると原子力規制委員会の同意人事 を撤回させられるのですか。
(答)「内閣不信任決議案」はすべての案件に優先して審議されます から、同意人事案も止めることができます。不信任案が可決されれば同意人事案の提案も審 議されなくなります。不信任案が可決されれば、その理由となった原 子力規制委員会同意人事案も撤回され、新しい同意人事案が提示されることになります。

〔説明〕
政府と民主党・自民党は、原子力ムラの人たちで構成される「原子力規 制委員会」の同意人事を、国民がその本質を知る前に決めてしまおうとしています。す でに8月1日に形だけの委員長候補の意見聴取を行い、8月上旬には数の力で決めてしまうという日程を考えています。そ して、現在の国会は、民主党・自民 党・公明党の疑似連立ですから、数の力で「原子力ムラ原子力規制委員会人事」を通そうとしています。
原子力規制委員会同意人事案に対して「内閣不信任決議案」を提出する ことにより次の効果があります。
第一に、内閣不信任案提出の動きを察知して、責任者である細野大臣以 下、野田総理・藤村官房長官が、原子力規制委員会同意人事案はいかに民意に反するものであるかを反省して、撤回する機会を与えることがで きます。
第二に、原子力規制委員会同意人事案を撤回せず、あくまで原子力ムラ 人事案を強行しようとすれば、内閣不信任案を提出するしかありません。民主党・自民 党・公明党の疑似連立の状況にある国会では、他に手立てはありません。連立は「疑似」ですから、自民党や公明党は、内 閣不信任案を提出されれば、真正連立 になって不信任案反対をするか、野党として内閣不信任案に賛成するかを迫られます。民主党からの造反が出れば、内閣不 信任案は可決されます。原子力規制委 員会同意人事案が不信任の理由の一つとなるのですから、政府の同意人事案は撤回されます。
そして、総辞職後の新しい内閣か、総選挙後の新しい内閣が、原子力規 制委員会の同意人事を提出しなおすことになります。

(問3)内閣不信任案を提出して解散になり、自民党内閣ができてし まったら、もっと悪くなるのではないでしょうか。
(答)現在も政策的には自民党野田派です。現在よりも悪くなるとい うことはありません。

〔説明〕
現在は、国会は、既に、民主党・自民党・公明党の疑似連立内閣状態で す。より悪いことに、野田内閣は政権を維持するために、自民党でさえ躊躇していた集団 的自衛権や自衛隊の海外での戦闘行為を積極的に認めようとしています。まさに自民党以上の自民党野田派というのが現状 で、実質自民党と変わりありません。 悪くなりようがありません。
仮に、解散総選挙後、自民党が第一党になって公明党を加えても過半数の 議席に達しない場合、民主党で自民党と連立を組むとすれば、野田・岡田・仙石グループしかないでしょう。いずれにしても、民主党は更に分 裂・崩壊です。
もちろん、再稼働反対・脱原発を実現するには、選挙後の民主(野田・岡 田・仙石グループ)・自民党・公明党の連立を防止することができるよう、再稼働反対・脱原発の国会議員が過半数を占めるように選挙を行わ なければなりません。

(問4)今、内閣不信任案を提出して8月解散・9月 総選挙になっては、脱原発の側の候補者擁立が間に合わないのではないでしょうか。
(答)解散総選挙は、民主党と自民党の談合で2013年1月 か2012年10月頃にあると想定でされます。2012年9月 総選挙と大差ありません。早く準備しましょう。

〔説明〕
現在の衆議院議員の任期は2013年8月末ま で、参議院議員の任期は2012年7月11日まで ですから、遅くとも2012年7月には同日選挙が行われます。
しかし、自民党は野田総理の消費税増税に協力する見返りとして「話し 合い解散」を求めています。岡田副総理は、12月に2013年度予算編成を民主党・ 自民党・公明党で行って1月選挙でどうかと自民党に提案しているという報道がなされています。予算を作れば、総選挙後も民主党・自民党・公明党 の連立政権 ができるという思惑です。これに対して、自民党は2013年予算を作る前に解散総選挙をして、自民党が政権に返り咲いて自民党がフリーハンドを持って政権 を作りたいと考えており、予算編成の時間を考えると選挙時期は2012年10月以前 (報道では11月以前)となります。
今、不信任案が成立すると、8月解散、9月総選 挙となります。自民党が考えている解散時期より1カ月早く、岡田副総理が提案した時期より4カ月早いとい うことになります。脱原発の側で選挙を戦う場合、この1カ月・4カ月の違いは、それほど大きいものではありません。脱原発の側の候補者は、脱原発解散が決 まった時がスタートになるということでは同じだと思います。

(問5)市民運動が政治や選挙に関わるのはいかがなものか。純粋に 政府に抗議・要求をすることで良いのではないか。
(答)衆議院選挙は、いつかは来ます。もっとも遅ければ2013年7月、民主党と自民党の談合による解散では2013年1月 か2012年10月です。原発再稼働反対・脱原発を実現しようとする有権者は、選挙権・被選挙権の行使を避けられません。
〔説明〕
原発再稼働反対、脱原発1000万人署名/国民投票・住民投票と、政治家に要求をしてきました。いずれにしろ、遅くとも2013年7月、早 ければ2012 年の9月/10月/2013年1月に総選挙があります。この総選挙では、棄権や白票を投じて当選した政治家にまた陳情や要請を繰り返すのか、それと も、自 分たちで政治家を選び、更に投票する候補者がいないならば自分たちで候補者を立てるのか、その選択を迫られます。再稼 働反対、脱原発を実現したいならば、 当然後者でしょう。

(問6)原子力規制委員会同意人事案反対で内閣不信任、解散になる と、原発再稼働反対・脱原発にどのようなメリットがありますか。
(答)市民が総選挙のテーマを設定する「脱原発選挙」になります。 市民が作りだした国民投票の絶好の機会となり、総選挙を有利に戦えます。


〔説明〕
解散総選挙は、テーマ設定が全てです。市民からの要求で内閣不信任案が 提出され、それが可決されて解散になれば、その総選挙は「脱原発選挙」となります。 そうではなく、民主党・自民党・公明党の談合で解散が決まれば「話し合い解散」となって、選挙のテーマがぼかされてし まいます。どうせどの政党が政権を とっても同じだというように。
遅くとも2013年7月、早 ければ2012年の9月/10月/2013年1月に総選挙があります。この総選挙を、市民のイニシアチブで解散させ、「脱原 発 選挙」として戦うことができれば、原発再稼働反対・脱原発で選挙を戦う候補者に有利になります。もちろん、内閣不信任案は、すべての案件 に優先して審議 されますから、原子力規制委員会同意人事も止めることができ、新たに選挙で選ばれた政権が提案し直し、新たに選ばれた 国会が同意することになります。

(問7)内閣不信任案が可決されても、野田内閣が総辞職し、総選挙 にならないのではないでしょうか。
(答)内閣総辞職をすれば原子力規制委員会同意人事案を撤回する可 能性が出てきます。それは成果です。しかし、新しい民主党代表・総理が選ばれれば、直ちに解散・総選挙が行われる可能性もあります。
〔説明〕
内閣総辞職の可能性はあります。民主党に残っている人は、次の総選挙で は有権者に見放されると思っていますから、出来るだけ長く国会議員をしていたい、そ れも与党でいたいという人たちです。ですから、内閣不信任案が可決されても、あるいは可決されるかもしれないという状 況になると、民主党内で「野田降ろし (野田さん総理をやめてください運動)」が起きる可能性があります。
野田総理が辞職すれば新しい民主党代表が得られて新しい総理大臣となり ます。そこで新しい原子力規制委員会同意人事案が出てくる可能性が出てきます。ま た、一時的に御祝儀相場になって支持率が上がるというのが過去の傾向ですから、民主党としてはその時しか選挙のタイミ ングは無いと考えて、解散総選挙にな る可能性があります。
なお、可能性は少ないですが、原子力規制委員会の同意人事案が野田内 閣不信任案のヒキガネとなったとすれば、原子力規制委員会同意人事案の撤回もあるか もしれません。民主党や閣僚には、「この原子力規制委員会同意人事案の何処がいけないんだ」と思っている人もいるの で、「内閣不信任案提出」は、この同意 人事案がいかにひどい提案であることを知らせる効果もあります。

(問8)そもそも内閣不信任案を提出できるのですか。
(答)民主党・自民党・公明党の疑似連立与党以外の政党で、内閣不 信任案提出に必要な51人はいます。内閣不信任案提出に、民主党と事実上 の連立を組んでいる自民党の意見を聞く必要はありません。

〔説明〕
内閣不信任案は、衆議院議員51名いれば提出できます。51人 という数は、「国民の生活が第一(小沢新党)・きづな」(47人)が参加しなければ集まりま せん。しかし、日本共産党(9人)、 社会民主党・市民連合(6人)、みんなの党(5人)、新党大地・真民主(3人) その他の無所属議員が内閣不信任案を提 出することを決めれば、「脱原発・消費税増税反対・TPP反対」を掲げている「国民の生活が第一(小沢新党)・きづ な」が逡巡しているわけにはいかないで しょう。内閣不信任案を提出できる可能性は高いと思います。

(問9)内閣不信任案は成立しますか。
(答)民主党からの造反が必要ですが、民主党の中には野田内閣の 「原発推進、消費税増税、TPP推進」の政策に反対の議員が多数いますので、内閣不信任案が成立する可能性はあります。

〔説明〕
現在衆議院議員は480人います。過半数は241人 です。
自民党は、消費税法案採決後の早期解散を打ち出しています。消費税法 案採決前に内閣不信任案が提出されて、野田内閣を信任してしまうと「信任した野田内 閣に解散を求める」ということはできなくなります。野田内閣を信任するということは、本格的に民主党と連立内閣を組む ということになりますが、それでは 2013年7月まで選挙は無いことになり、自民党にとっては耐えられないでしょう。ですから、自民党・公明党は不信任案賛成という ケースを考えます。
とすると、単純に与党だけが不信任案に反対すると計算すると「民主 党・無所属クラブ」(250人)と「国民新党・無所属会」(4人)の254人にな りま す。したがって、与党の14人 が不信任案に賛成すれば、不信任案への反対票は240人となって過半数を下回ります。これで不信任案が可決 します。民主党に は、消費税反対・原発再稼働反対・TPP反対の人たちがいます。鳩山由紀夫さんは、原発再稼働反対の集会に来ていただ きました。14人以上の造反は可能性 があります。
次に、内閣不信任案に棄権する野党第一党など聞いたことがありません が、自民党と公明党が態度を決め切れず「棄権」という前代未聞の行動に出たケースを考えます。
この場合は、480人-(自民党・無所属の会(120人)+ 公明党(21人))=338人が投票数となります。過半数は170人です。与党は254人 で すから85人が造 反すれば、不信任案への反対は169人となって過半数を下回ります。85人は大変ですが、民主党内では、9月 の代表選挙で野田さんを認め ないという勢力があります。内閣不信任案を否決して野田総理を信任しておいて、代表選挙で野田総理を引きずり下ろすな ど理屈が通りません。造反して、内閣 不信任案が成立する可能性はあります。

エネシフジャパン有志/eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)