【声明】 原子力発電コスト過小評価に異議-原発事故損害費用は桁違い!

2011年10月26日
eシフト:脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会

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<声明> 原子力発電コスト過小評価に異議-原発事故損害費用は桁違い!
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内閣府・原子力委員会の「原発・核燃料サイクル技術等検討小委員会」は25日、「福島第一原発事故を踏まえ」原発で重大事故が起きるリスク(事故リスク)をコストに反映させると電力1kWhあたり1.2円上昇するとの試算が示された。

しかしこの試算の前提となる今回の福島原発事故の損害費用見積は5兆5000億円としている。これは事故の損害のうち東京電力による賠償が現在決まっている最低限の額に過ぎず、損害費用が「評価」されているとは言えない。eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、以下の理由からこのリスクコスト評価の前提に異議を申し立てる。エネルギー・環境会議はこの「原発発電コスト1.2円増」という結果を「コスト評価」の前提として用いるべきではない。
もしこの結果が用いられる場合、今後の原子力発電に関するコスト評価の議論は著しく歪められるだろう。

  1. 1.福島原発事故の損害費用見積もり約5兆5000億円は、10月3日現在明らかに なっている東京電力による損害賠償額を参照しているにすぎず、除染費用(※1)、放射性廃棄物処理等の行政費用、自主避難および汚染地域に残っている人への賠償費用(※2)、晩発性障害への賠償費用等が含まれていないものである。
  2. 廃炉費用についても、福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉費用の追加分として約9,600億円としているが、事故収束・廃炉の見通しも未だ立っていない中で、最低限の見積に過ぎない。
  3. 上記を正当に「評価」すれば、委員会参考資料に提示されている48兆円をも大きく上回る損害費用が容易に想定され、約5兆5000億円とは少なくとも1桁以上の乖離がある。さらに、福島第一原発事故被害の全容はいまだに明らかになっておらず、試算できない社会的・環境的損害をも考慮すれば、48兆円という額でさえ、全体の損害の一部を表しているにすぎない(※3・4)。

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※1:環境省は、追加放射線量年間1mSv以上の地域で除染を行うとしており、その除染費用は莫大な額に上ることが予想される。委員提出資料でも、広域除染費用は28兆円と推計されている。

※2:原子力損害賠償紛争審査会第15回(10月20日)にて、自主避難者および汚染地域に残っている人への賠償についても認められる方向性が示されている。同審査会第14回(9月20日)資料に明らかにされているだけで、福島県からだけでも約3万6千人が8月末現在で自主避難している。

※3:被曝防止措置や晩発性障害なども考慮する朴勝俊(「原子力発電所の過酷事故に伴う被害額の試算」『國民経済雑誌』191巻3号、2005年)によれば、過酷事故の損害費用は平均で62兆円、最悪の場合には279兆円に上るとされている。

※4:エネルギーシナリオ市民評価パネルは、事故コストについて、損害費用が48兆円の場合16円/kWh、279兆円の
場合93円/kWhになると試算している。

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別添: エネルギーシナリオ市民評価パネル  「エネルギー費用に関する評価報告書」補論1
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